
つぶやき進化論 「140字」がGoogleを超える! (East Press Business)
- 作者: エリック クォルマン
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2010/07/29
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
R+さんから献本していただきました。
これから会社でTwitterを使おうとしている人、あるいはすでに使っている人、必読の本です。
原題は「Socialnomics‐How social media transforms the way we live and do business」といいます。twitterやfacebook(アメリカ版Mixiのようなもの)といったソーシャルメディアによって我々の生き方や仕事の仕方が変わっていくというテーマについて書かれた本です。
世の中はグーグルなどの検索エンジンの登場によって大きく変化しました。知りたい全ての情報はわずか数クリック先にあり、つねに最新の情報が手の届くところに固められてあります。しかもそのようなサービスを消費者はお金を支払うことなく、利用できるのです。サービスを提供する会社は消費者からお金をもらう代わりに広告を検索結果に表示することによって収入を得ています。
しかしいま、また新たな、大きな変化が起きようとしています。それが、twitterのようなミニブログやfacebookのようなソーシャルネットワーキングサービスなのです。人はつねにそういったツールによって自分の情報を友人に対して更新し、お互いの情報を共有しあいます。増えすぎた何億という情報から欲しい情報を取り出すためにGoogleに行くかわりに、自分の友人のネットワークから情報を取り出す(社会的つながり(ソーシャル)を介する(メディア))ようになり始めているのです。
見ず知らずの他人が映画やレストランをほめるより、よく知った友人の情報の方があてになるということを我々はよく知っています。何十という広告から自分で欲しいものを見つけるより、友人がすでに持っていたり体験したことのある商品について知ることの方がより有用な情報を得ることが出来ます。
いま、そういったソーシャルメディアによってこれまでごく身近な人からしかえられなかった情報が、Googleを使うような手軽さと、あらかじめ最適化された規模から、取り出せるようになりつつある。
この時代の変化についていっているものはすでに大きな成功を収めており、ついていけないものは確実に破滅の道を歩んでいると著者は言います。
時代の流れが非常に速くなった今日では
新聞はもはやニュースの生素材を伝えているだけではだめで、その意味について「意見を述べ」、付加価値をつけるべきだろう。 p.27と著者は言います。
そして、
実はこの本でも、その現象が実感できる。印刷されるまでの間に、本書に収められた多くのニュースが時代遅れになる可能性もある。といいます。
だから書籍にとって重要なのは、新聞や雑誌と同じように、ニュースが意味することについて役に立つ意見を述べ、これまでに生まれた構図とこれから生まれるであろう構図を明らかにする能力なのだ。 p.27
実際、本書には多くの箇所で「執筆時点では」とか「刊行時点では」といった表現が用いられています。多くの具体的な事例を用いつつ、本書が読まれるときにはすでに現実とは一致しない点があるかもしれないということを自覚しつつ、その現象の意味と今後の構図についての示唆を著者は与えてくれます。
いまでも多くの企業が著作権を頑なに守ろうとする一方でいくつかの企業は積極的に消費者にtwitter上などでの再生産を促します。
ソーシャルネットワーク内のつながりを効果的に活用したい企業は、「情報は、簡単に転送できるようにするべもはや、企業が独自にマーケティングを行う時代は終わっており、消費者にそれを代わりにやってもらう時代になっているのです。twitterで他者の発言を引用する機能(リツイート)などはその象徴的な例といえると思います。
きだ」ということを理解しなくてはならないのだ。 p.27
またソーシャルメディアを使うことで
他のユーザーのために情報を整理することにもなる。これがソーシャルメディアの強みだ。 p.37と著者は言います。
著者が示す面白い例としてブリタニカ百科事典とウィキペディアの比較があります。
ネイチャーが行った調査では、ブリタニカ百科事典とウィキペディアの両方から幅広いテーマの記事を選び、それぞれの分野に詳しい専門家に送って査読を依頼した。どちらがウィキペディアでどちらがブリタニカなのかを知らされないまま、専門家たちは2つの記事を丹念に比較した。ネイチャーが専門家から集めた有効な査読結果は42 件だった。結局、重要な概念について根本的に間違っているなど重大な間違いが8カ所見つかったが、そのうち4カ所はどちらの百科事典にも共通していた。世界的に有名なブリタニカ百科事典ですら、ソーシャルメディア(人々のつながり)によって生み出されるウィキペディアにはかなわないという自体がすでに現実に起こっているのです。
ウィキペディアはブリタニカ百科事典と同じぐらい正確だったという事実がこの調査で明らかになったのだ。p.41
だから著者は訴えます。
企業はそもそも、ビジネスモデルを大きく変えなくてはいけない。ビジネスモデルを変えもせずに、「デジタル化するだけ」ではダメなのだ。ソーシャルメディアの影響と需要に応えられるような、根本的な変革が必要だ。 p.53重要なものは企業単独では作れない。ソーシャルメディアの影響と需要にこたえられうシステムになっていないと、ダメなのです。著者は更に語彙を強めます。
企業は目を覚まさなくてはなるまい。ネット上の「新しいメディア」(twitterなど)は消えてなくなってはくれない。目の前にあって、1番重要な位置に陣取っている。だから、企業は目を覚ましてそれに注意を向けるか、さもなくば注意を払っている会社に負けるか、しかないのだ。p.59
これまでの情報形態なら会社に都合の悪いことはもみ消すことが出来たでしょう。しかし、情報を発信しやすく、しかも発信した情報があっという間に伝わる今日の世界ではそれは不可能です。不可能であるだけではなくより不利に働く、というのが著者の主張です。そしてそのような世界の変化をチャンスと捉えなければならないと言います。
Twitterなどのソーシャルメディアの出現によって、顧客は不満をつぶやきやすく、企業はそれを見つけやすくなった。つまり、企業は問題の「発見」よりもその「解決」に多くの時間を割くことができるのである。
優れた企業はTwitter の登場を、顧客のために一層の努力をすることをいとわない企業姿勢を見せる絶好の機会ととらえているのだ。p.64
いま企業がやらなくてはならないことは、ユーザーが、自分のイメージに重ねたいと思うだけでなく「発信したい」と思うようなブランド力をもつ商品をつくることともいえる。p.71
いま企業が力を入れなくてはいけないのは、目的がはっきりしていて役に立つものを消費者に提供することだ。これまで消費者から嫌われてきた典型的なマーケティングとはまったく逆だ。宣伝文句に中身のない約束をならべるのではなく、ほんとうに価値のあるものを消費者に提供することだけを考えるべきなのだ。p.72特に最後の引用を読んで気づかれた方もいるかもしれない。そう、意味のないマニフェストを繰り返し、出来もしない目標設定をし、少し批判をされると「言っていない」「そういう意味ではない」と繰り返す政治家は確実に淘汰されるのです。企業が変わらなければ生き残っていない現状において、政治家だけは特別であるという時代はとうに終わっているのです。著者が訴えるSocialnomics(みんなの経済)の時代においては、すべてのサプライヤーが変わる必要があるのです。
政治だけは昔どおりでいい、あるいは例外だと考えるのはナンセンスなのです。
実際、著者はオバマがいかにfacebookやyoutubeという新しいメディアを通して選挙戦を勝利したかを説明しながら、これからの国民と政府のかかわりについても訴えています。
ソーシャルメディアは、政府が国民とさらに団結して、政治的な駆け引きから脱却して問題の核心に迫り、本当の意味での民主主義を実行する手助けとなる。 p.113
ソーシャルメディアが社会に大きな影響を与える世の中は著者の言う「みんなの経済(Socialnomics)」の世の中です。そしてそれは経済にとどまらず政治も同じです。
2008年、ITアドバイザリ会社のガートナー・グループは、ソーシャルメディアが政府の機能を補う、あるいは部分的に置き換えることさえあるだろうという仮説を立てた。ばかばかしいと笑い飛ばす向きもあるだろうが、そもそもアメリカ政府とはそういうものであるはずだったのでは? つまり、人民の人民による人民のための政府、だ。 p.113
twitterが投稿可能数を140字に制限しているのは偶然ではありません。時代がそちらにシフトしつつあり、それを的確に捉えたのがtwitterだったに過ぎないのです。
イギリスのトニー・ブレア元首相は、ニューヨークで2008年に開かれたワールド・ビジネス・フォーラムでこう述べた。「情報がこれほど速く広がるようになった今、一般の人やマスコミに何を伝えるにも簡単にわかりやすくまとめなくてはいけません。ところが複雑な問題になると、それでは伝えられない。これは本当に難しい問題です」。簡潔でわかりやすいコミュニケーションを取り入れるしかない。好きかどうかにかかわらず、それが正しいかどうかにかかわらず、そんな時代になったのだ。 p.186何度も繰り返しますが、政治家も同じです。国民が求めているものは常に「よりよい暮らし」と政治家のアカウンタビリティ(説明責任・説明能力)です。今の政治家に足りないのは「よりより暮らし」を理解するための「聞く力」、それを作るための「ヴィジョン、見通す力」、そしてそれらを「説明する力」です。言い換えれば、耳と頭と口が足りない。なんだか、何も足りないような気がしてきます。しかし著者の主張を取り入れるなら、良い耳さえ持っていれば、よりよい暮らしは国民とともに作り上げていけばいいのです。それこそが民主主義なのです。Socialnomicsの世界では、より良い製品を作るには企業と消費者が必要なように、政治家と国民、その両方に責任があるのです。
会社や商品の特徴、他社との違いを簡潔にわかりやすく言えないようなら、すぐに事業を見直さなくてはならないからだ。
この新しい世界では、まずメッセージ戦略を決め、市場からのフ
ィードバックを参考にしながら、戦略が正しいかどうか見直したり修正したりしても構わないのだ。顧客と対話をしていれば、変わり続けるニーズをすぐに見つけて対応することができるだろう。 p.187
著者は徹頭徹尾ソーシャルメディアが個人や企業、そして社会に良い変化を与えると訴えます。例えば、
今、そしてこれからも、個人や企業は自慢したいことがあればソーシャルメディアを使って世界じゅうに知らせようとするだろう。これはすばらしいことだ。何も自慢するものがない人は、いまの行動(テレビを見るとか)を改めて何かおもしろいこと(脚本を書くとか)を始めつまり著者の論理はこうです。ソーシャルメディアは自慢をあおる。自慢するにためにはよりよい生活が必要、より良い生活はより良い社会作りにつながる。
るだろう。長い目でみるとそれは、より意味のある社会をつくることにつながっていく。 p.91
しかし、全ての人がより良い生活を遅れるとは限りません。他人の生活を見えやすくするソーシャルメディアの存在のもとでは、そういった人たちとの格差はより明確に、そしてあからさまになるでしょう。
また著者は
ソーシャルメディアがあれば人々はその場で人生を見直し、いつも人々を悩ませてきた「私の人生はこれでいいのか?」という問題に答えを出しやすくなる。今までより多くの人が生産的な活動や社会貢献に関わろうとするようになるため、社会にとってもプラスになる。 p.92と言います。これはある一面においては事実ですが、つねにポジティブな結果を生み出すとは限らないと私は思います。
ソーシャルメディアの存在によって、自分の生活に対して不満感や、relative deprivation(他者との比較によって経験される相対的な喪失感)を経験する頻度が増えます。その不満感や喪失感をポジティブな行動で満足感や充実感に変えられる人はいいですが、それが叶わない人は、衝動的、暴力的な方法でそれを解消しようとするかもしれません。秋葉原無差別殺傷事件などはその一例と言えるでしょう。
後半では、より具体的なテーマを取り上げつつ、twitterがどのようにビジネスを変えていくのか、あるいは自分の会社をsocialnomics時代に合わせてどう変えていくべきなのかを説明しています。ここでは、いくつか指針が挙げられていたので、それらを紹介したいと思います。
●昨日までのマーケティング担当者の考え
・重要なのは、メッセージやブランドイメージがセクシーで魅力的なことだ。
・とにかくメッセージで決まる。マーケティングが良ければどんなものでも売れる。
・私たちは顧客が何を買えばいいのか知っている。顧客は自分が本当は何を求めているのかを知らないのだから、それを勧めるのが仕事だ。
・まず社内で商品やメッセージを開発して、それを一般の人に広める。
●今日からのマーケティング担当者の考え
・重要なのは、顧客のニーズに耳を傾け対応することだ。
・とにかく商品で決まる。他のあらゆる部署と連携を取り続けなくてはいけない。
・顧客にとって何が正解なのかは私たちには絶対にわからない。だからいつも顧客の声を聞いて調整を続ける。最初から答えがわかっていることなどほとんどない。
・商品を広める力は私たちより顧客のほうがたいてい大きい。顧客のアイデアを活用することができれば、みんなが得をするp.188
もしこれから巨大ソーシャルネットワークのどれかに(自分の企業が)進出するところなら、以下に関わる基本事項をしっかりと認識しておくのがベストだ。
1.なにをするか
2.どこでやるか
3.なぜやるのか
4.どのような成功の形をとろうとするか
5.どのような落とし穴があるか p.241
ソーシャルノミクスの世界で成功しようとにらんでいるのなら、以下のことが不可欠だ。
1.誰かの成功を足掛かりにする。必ずしも一から築き上げる必要はない。自尊心は捨てよう。
2.地元の顧客を活用する。リアルタイムで作ったり直したりするのを手伝ってくれるのは彼らであることをしっかり認識する。
3.過度に投資しない。すばやくテストして修正できるような手軽なペータ版を作る。
4.自分が目指すものをじっくり考える。すべてを手に入れようとしてはいけない。そしてひとたび決めたなら、迅速に断固たる態度で臨む。 p.248
著者は言います。
140字の世界には長所も短所もあるが、いずれにせよ後戻りはできない。ソーシャルメディアの発達により個人がより大きな力を持ち、その個人が集まった時の力がより強く、しかも取り出しやすくなっています。新しい世界に企業はどう動くのか。その対応次第で自社の
“遺伝子”を次世代に残せるかが決まる時が来ているのです。
ここで紹介できたのはまだ本の一部です。「もっと知りたい!」と思った方はぜひ手に取ってみてください。
以下、誤字脱字。
友人のうち2人はゴーアヘッドツアーズでチリを訪れ、高く評価していた(こと)がわかる。p.141
彼らは、一般の人に特定チームの「スーパーファン」になってもらい、記事を書かせたの(で)だ。p.201
Twitter人気が高まった理由は、まだあまりみんなが使っていなかった(の)からこそ自分を印象づけられるし、クールだったからだ。p.212
(一字下がり)そして、願わくば本書の読者の中からp.319

